怪奇タイヤ男。第0回。

未だに中部圏では、ミシュランガイドが出ていない。
ミシュランガイド東京版が出たとき、首都圏に住む食いしん坊は期待と不安で、まるで意中の異性にコクる直前の中学生のような気持ちだったことだろう。
果たして発売されたそのガイドブックは、自国の文化が他国民に認められると無条件に萌えてしまう我々から見ても、「いくらなんでも星バラマキすぎじゃないの?」というほどに、嬉しいんだか恥ずかしいんだか。と微妙な感じだったと記憶している。
その後ミシュランガイドは京都・大阪版が出版されて、愈々名古屋だなー。と思って日々を暮らしていたのだが。

いつまで経っても出る気配がない。

これはどうしたことだろう。名古屋には料理屋が無いのか。いや、そんなことはない。街中には次から次に新しい店が出来ては潰れしているし、テレビや雑誌にはグルメコーナーが必ずある。情報は山ほどあるのに、うまく批評がはたらいていないのか。
ここで浮上してくるのが、「ぐるナビ」などのSNSの存在だ。あれには口コミの評価が書いてあるが、果たしてあれは批評なのか。どう見ても批評とは言えない。店内の雰囲気がいい。という文章があったとして、どういう風に雰囲気がいいのか。料理屋について書くのならば、料理が美味しいだけではなく、その他の付帯情報まで記述しなければならない。

そこであたしもレストランについてのエッセイを書くことにした。一応ルールを決めておく。

1.料理の写真を載せない。供された皿は、すぐに食べないと、シェフに失礼だ。とくに温かいものは。
2.点数をつけない。ランキングするのが目的ではないし、そもそもあたしは日に煙草を一箱消費する、ポンコツ舌の持ち主だ。

以上の二点を心掛け、今後は様々な料理屋に行き、様々な皿を平らげては「気が狂うくらい旨いな・・・」と、夢見心地になるだろう。そうして身支度を整え、いつか襲いかかるミシュランガイド中部版への、理論武装をしておくのだ。

タイヤ男は、もうすぐそこまで来ている。