甘い拷問。第二回。エッグベネディクトでサイコ。

先日テレビでね。
「ふん?」
エッグベネディクトの作り方をやっていたのだよ。
「それで今日はエッグベネディクト奢ってくれてるわけね?」
まあね。そいでね、これの作り方で難しそうなのは、オランデーズソースのレセピじゃない? それがね、ポーチドエッグの作り方にけっこうな尺をとっていたのですわ。イラっとしたねあれは。
「え? ポーチドエッグって、これでしょ? なんだっけ、お湯にお酢入れて、卵落とすだけでしょ」
そうよ。常識じゃあねえのか?
「うーん、、、おかーさんに聞いた気がする」
そうじゃなくてもさあ、学校の家庭科でやらなかったかね? まあとにかく、テレビってのはどんだけ視聴者をナメ腐っておるのだ、と思ったのね。
「それは、、、あれだね。あ、いつもなんか奢ってくれてありがとうね」
いいんだよそんなの。女の子にメシ奢るのが俺の趣味なんだからさ。ほら、つまらん話を聴く際のギャラだと思ってくれれば。
「じゃあ今度はね、たらふくフォアグラ食べたい」
それは、、、すいません、勘弁してください。

で、ウディ・アレンの新作がもう公開中なんですけども。
「うん」
それとは関係なく、ヒッチコックの「サイコ」を見直したんですよ。
「知ってるー。シャワー浴びてる人が刺されるヤツ!」
そうね。今回見直したのは、そのシーンを確認したかったの。
「確認?」
あそこは何カットあるのか。と勘定してみよう、と。無理でしたね。あ、因みにあのシーンで流れる血液は、実際はチョコソースです。
「ああ、粘りが」
たぶんちょうど良かったんだろーなー。でもやっぱ、あの惨殺シーンだけでだいぶ時間かけたらしいのね。膨大なカット量ってことは、その設計図であるところの絵コンテも膨大ですよ。
「ふん、、、、」
聞いてる?
「続けて。聞いてるから。一応」
じゃあ続けるけど。いわゆるサイコホラーの原型ですよね。映画史において、変態にスポットを当てたパイオニアかもしれない。
犯人のノーマン・ベイツは、死んだ母親のコスプレをして、若い女を殺しまくっているわけですが、映画の最後に、精神分析医がそのことをぜーんぶ説明するのね。
「でもそれだとさー、要するにネタバラシでしょ」
そう。公開当時は、そんなド変態を犯人にした映画がなかったから、これこれこういう事だったのです、と説明する必要があったのですよ。客はそんな人物を初めて見るわけだから。
「今となってはね、、、。何が変態だかわかんないもんね」
結果、「サイコ」は映画史に残る傑作になったわけですよ。
「あー。わかりやすさかぁ」
大衆娯楽ですからね。

「戻すけどさ、要するにマザコンこじらせた、ってことでいいの?」
まあ、そうかな。
「そのくらい今だったら普通だよね」
おおう過激な発言。
「大抵の男はマザコンですよ! それのこじらせ具合が違うだけよ!」
おいおい。
「アタシね、こないだ男捕まえたんだけどさぁ、こいつがまあけっこうキツイヤツでさあ!」
それ、長くなる?
「ひっきりなしにママからメール届くの! それにニッコニコしながらレスしやがってさあ!」
(店員に)すいませーんお会計を
「聞いてる?」
聞いてますから。あまり大声出さないで。ね?