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甘い拷問。第四回。グラノーラに反撥。

グラノーラってさあ」
うん。あまり食べないけど、旨いねえ。
「鳥の餌みたい」
おいおいおい、旨い旨いって食べてる人の前でそういうこと言うかね?
「でもさあ、どうしてもそう見えちゃうんだよねえ。美味しいけど。それに、けっこう早く食べないとヤバくない?」
ああ。ミルクを吸っちゃってふやけるから。

で、今日は、ロマン・ポランスキー監督の「反撥」。主演はカトリーヌ・ドヌーヴ。1962年の作品ですね。
ポランスキー。ふざけた名前ね」
いや、ポーランド人だから。確か。たぶん。映画マニアとしてはポランスキーと言えば、ロリコン豚野郎。というトリヴィアを基本装備していますね。
「おおう。聞き捨てならんフレーズ。え、なに? ロリコン?」
その話は長くなるので、各自ググっていただければ。もうこの人は。人生が滅茶苦茶面白いので。
ジャンルとしては、サイコサスペンスですね。
「(口をもごもごさせつつ)うん」
カトリーヌ・ドヌーヴが演じるのは、男性恐怖の気がある女の子。お姉さんと一緒に、ニューヨークで暮らしています。
「(口をもごもごさせつつ)ほうほう」
このお姉さんは妹とは真逆の人で、奔放な女性です。只今絶賛不倫中で、毎晩不倫相手を連れ込んではセックスに励んでおりますよ。
「嫌だなー、それは」
妹は毎晩お姉ちゃんの喘ぎを聞かされるのよ。ある意味地獄や。
「ほんまやで」
そんなお姉ちゃんが、不倫相手とイタリア旅行に出かけるの。いきなり独りになっちゃった。さらに、ボーイフレンドにはいきなりチュウされちゃう。そういうので、もともと不安定な妹の心がさらにぐらついていくのね。
「いきなりチュウ? さして好きでもない男から?」
うん。んで、妹は家に引きこもるようになります。外出したら最後、男からなにされるかわからない。その不安が様々な幻覚を見せていく。壁に罅が大きな音を立てて入ったり、壁が柔らかくなってそこから男の腕が飛び出したり、挙げ句の果てにはレイプされる幻覚まで。
「え?」
現実ではジャガイモの芽が伸び放題。買っておいたウサギの肉には蝿が集る。部屋の中は荒れ放題で肉の腐臭が立ち込め、という状況になっちゃう。
「ちょっと」
んで、そういうところに、ボーイフレンドがやってくる。一応こないだのチュウを謝りに来たのね。いきなりチュウしてごめんね、って。でも彼女はもうテンパってるから、聞く耳もたず。ただ、目の前の男に犯されるかも! 手元には燭台。っていうか鈍器。
「はいガツーンだ!」
もうボッコボコです。息絶えた男を引きずってバスルームに隠します。勿論、壁は罅が入りっぱなし。レイプ幻想はまだまだ続き、どんどん追い詰められていきます。
「いよいよ発狂?」
嬉しそうだねーキミは。次は大家のおっさんが、様子を見に来るんですね。その頃になると、主人公は服はボロボロ、顔は窶れて、髪はバッサバサ。おっさんもね、ついついエロいこと考えるけど、剃刀で首を斬られてギャーッ。
「そんなボロボロの女の子見て、エロい気持ちになるかね?」
ラストシーンは、衰弱しきった妹を、不倫中の姉ちゃんが発見してお仕舞い。
この映画で一番怖いのが、妹のバックグラウンドが全く見えないんです。いきなりチュウとか、毎晩の喘ぎ声とかは、狂気のスイッチでしかない。
この女はなぜ、男性恐怖になったのか。狂気の理由が全く描かれないまま、映画は終わる。
「理由がない。かー。でもさあ、理由がないほうが怖いよね」
ああ。そうね。
「例えばさあ、廃病院とかお墓とかだとさあ、幽霊出てもおかしくない、っていうか。これがどこかのファミレスとかでなんのエクスキューズも無く、幽霊が出るから怖いよね。え? なんで?って」
しかも説明しないっていうね。観客は不安の中に取り残されたままだ。そういう意味であれすると、これ、ホラー映画なんだね。
「ねえ、後ろ」
ん? どうかした?
「壁に罅が。罅入ってる」
ええ?(振り向いて) なんともなってないよ?
「、、、、、、。ごめん、あたし帰る」
え。どしたの急に。
「なんか、、、気分悪いの。ごめん」