躁状態の私。

最近まで、自分でもどうかと思うくらいの躁状態だったのでした。まあ理由もなんとなく見当がついていて、そこそこの稼ぎがあり、そこそこ仕事も順調だったり(休みはないけど)、そうなると、貧乏だった頃に倒せなかったものをお金の力でなぎ倒す。みたいなことになっているわけですよ。本もCDも、なんか怖くなるくらいに増えている。

そういう中から、これは本当に今さらなんですけど、ロバート・グラスパーの「Black Radio」ばっかり聴いているんですね。
いわゆる「今ジャズ」というムーブメントの中心人物。なんですけども。

そもそも「今ジャズ」って何? と聞かれたら、あたしもよく分かってないのですが、と前置きしてから、
「ヒップホップもR&Bもポップスも、もちろんジャズも、全ての音楽を混ぜて、ジャズの器に注いだカクテルみたいなもの」
と、返します。

実際にグラスパーの音源をプレイしてみると、スムースなR&Bみたいな音をしています。ですが、楽曲全体で見てみるとジャズになっている。
あと大きいのは、ジャズのルーツにまで遡ろうとする意志の強さ。ですかね。
それは特にリズムに顕著に出ています。変拍子ポリリズムを駆使した不定形のリズムパターンは、彼等のルーツであるアフリカの音楽に非常に似ている。急にスピードが速くなったり(実際はbpmは変わってない)、いきなりつんのめったりするビートは、アフリカの部族の音楽を思わせるし、何よりも4拍子に慣れたあたしには、とても新鮮。

そしてこうした動きが、アメリカのポップスに大きな影響を与え、さらには人種問題にも繋がっていくわけですね。ケンドリック・ラマーなどのラッパーが、今ジャズ界隈のプレイヤーを使って、レイシズムに深く斬り込むアルバムを作ったりしています。
リリックも、かつてのギャングスタの歌詞みたいに派手な怒りではなく、静かに深く怒っている。いつまで俺たちは、白人のポリ公にボコられなきゃいけないんだ?キング牧師が死んで何年経ったんだ?

あまりに理不尽な黒人差別を前に、彼等は音楽を使って闘っています。薄汚い差別主義者に対して、直接的暴力闘争ではなく、音楽や文化で闘っています。

あたしは、音楽で世界を変えることなんて出来るわけがない。と思います。でも、だからと言って、差別主義者と闘っている彼等を「必死杉www」とかは言いません。それは人間のクズよりさらに下の、ハナクソのやることです。

音楽で世界は変わらない。だけど、やらざるを得ない。というギリギリの闘争。それがたぶん「今ジャズ」というムーブメントであって、そのギリギリ感が、あたしの心を掴んで離さないのでした。