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Black is beautiful.

実家に戻って変わったことと言えば、外食の回数が減ったくらいである。今までは仕事で疲れきって帰宅して、その後で食事を作ることを面倒に感じて外で食べたり、或いは食べないこともしょっちゅうあった。今では何かしらの用意があるので、ついつい食べてしまう。体重の増加が不安ではあるが、無理しないようにキープするようにする。
もう一つ変わったことは、映画やレコードに今まで以上にお金を使えるようになったこと。家賃や食費の負担も大きく減り、その分を遊び方面に使えるようになったのだ。尤も、全額を遊びに遣うわけでもないが。

先日「マイルス・アヘッド」という映画を観てきた。ジャズの帝王。とも言われる不世出の天才、マイルス・デイヴィスを描いた作品。今からその感想を書く。

主演のドン・チードルの顔は、マイルスにはあまり似ていない。どうでもいいことかもしれないが、ここが重要なポイントなのではないか。つまり、これはマイルスの伝記映画ではなく、マイルスの人生を元ネタにした架空の物語ですよ。という宣言である。

映画はマイルス・デイヴィスが一切の音楽活動から退いた五年間にスポットを当てている。コカインをやりまくって退廃の極致にあるマイルスの元に、ローリング・ストーン誌の記者を名乗る男がやってくるところから始まる。そして紆余曲折、マスターテープを巡ってのカーチェイスを経て、シーンに復活するまでを描いている。

その間に、スターだった頃の回想が挟まって進んでいくのだが、如何せん、ネタが多すぎる。それだけマイルスの人生が波乱に満ちていた。ということではあるのだが、あれもこれもと詰め込み過ぎて、結果平板な印象を受ける。もっと要素を絞って構成した方が、全体が観やすくなったと思う。
動きのあるカーチェイスのシーンも、どうも必要なシーンとも思えないし、タランティーノみたいなことがやりたかったのかな? という感想しか持てない。

と、ここまでだとただの悪口なのだが、最後のライブのシーンでは落涙してしまった。
ロバート・グラスパー、アントニオ・サンチェス、そしてハービー・ハンコック(あとはど忘れした。申し訳ない)らを従えて、マイルスが好きそうなキメキメの衣裳を身にまとい、トランペットを吹くドン・チードル(音は別撮り。つまりは当て振り)を観て、この映画の真の目的が解った。

これはマイルス・デイヴィスのコスプレをする映画だったのだ。自分の好きな対象に自分を重ね合わせるという、ある意味純粋性に貫かれた作品だったのだ。そのことに気付いた瞬間、どうにも涙が止まらなかった。

全人類にお勧めできる映画ではない。音楽に興味の無い人が観たところで、はっきり言って時間の無駄である。
でも観たいのなら、Wikipediaマイルス・デイヴィスのことを下調べしておいた方がいい。白人警官に殴られて声を潰したこと、ボクシングが好きだったこと、などなどを頭に入れておいてから観るのなら、楽しめると思う。

それでは、また次回。